薄毛で悩んでいる方は、髪の毛を生やすことにばかり気を取られて、髪の毛が抜けないようにすることを疎かにしてしまいがちです。薄毛を改善するためには、髪がどうして生えるのか、髪の毛はどうして抜けるのかについてもしっかりと理解することが大切です。
髪の毛が生えるメカニズム
髪の毛は人間の皮膚が変化して出来たもので、大きく分けて毛幹と毛根に分けられます。
毛幹
「毛幹」は頭皮から外に出ている部分のことで、毛幹の中央には「毛髄質（もうずいしつ）」があり、うろこ状の「毛小皮（キューティクル）」が重なってできている「毛皮質（もうひしつ）」に包まれています。この「毛幹」は、約18種類のアミノ酸が化学結合して構成されています。しかし、「毛幹」には血管が通っておらず、その細胞を見ても核がありません。ですので、傷ついても再生する能力がなく、カラーリングやパーマなどでダメージを受けた「毛幹」を元に戻すことは現状では不可能とされています。
毛根
「毛根」は頭皮の中にあって表面に出ていない毛の部分のことです。髪の毛は毛根の中にある「毛乳頭」へ「毛細血管」を通じて多くの栄養成分や酸素と共にホルモンなどの成長因子を送りこみ、「毛母細胞」が細胞分裂を促すことで「毛包」に新しい毛が作られ、頭皮の外に押し出されることによって成長していきます。髪の毛が正常に成長している時には、外からは見えない頭皮の下に隠れた「毛母細胞」が活発に細胞分裂を繰り返しているということなのです。
薄毛の原因となるヘアサイクルの異常
実は髪の毛にも寿命があり、ある一定以上伸びた髪の毛は自然に抜け落ち、新しい髪の毛に生え変ります。この周期のことを「ヘアサイクル（毛周期）」と言います。髪の毛は1日平均0.3ミリのペースで伸び続け、男性なら2～5年、女性なら5～6年の間この状態が続き、この期間のことを「成長期」と言います。この髪の毛が伸び続ける「成長期」を経て、毛根が退化する「退行期」が始まります。毛根が退化する「退行期」から2～3週間後には髪の毛の成長が完全にストップする「休止期」が始まり、その後髪の毛は自然に抜け落ちていきます。一般的には男性の平均で10万本の髪の毛が生えていると言われており、10万本のうち10％にあたる約1万本の髪の毛が「休止期」にあるので、毎日50本～100本の髪の毛が抜け落ちるのは正常な証拠なのです。
「ヘアサイクル」に異常が発生しておらず正常な状態であれば、「休止期」を経て髪の毛が抜け落ちた後、2～3カ月後には再び同じ毛穴から髪の毛が生え同じサイクルを辿ることになります。ですが、この「ヘアサイクル」に何らかの異常が発生した場合、髪の毛の成長を抑制する因子が作用することによって「ヘアサイクル」の回転がストップし、薄毛や抜け毛の原因となってしまうのです。
ヘアサイクルが乱れる原因
上記で「ヘアサイクル（毛周期）」に何らかの異常が発生した場合、髪の毛の成長を抑制する因子が作用することによって「ヘアサイクル」の回転がストップし、薄毛や抜け毛の原因となってしまうとお伝えしましたが、ヘアサイクルを乱す原因としては以下のようなものがあります。
- 加齢
- 女性ホルモンの減少
- 睡眠不足
- 血行不良
- 喫煙
- ダイエット
- 環境によるダメージの蓄積
加齢
髪の毛は加齢とともに変化しているので、日々着々と細くなっていき、ハリ、コシ、ボリュームがなくなっていきます。例えば、女性の場合であれば髪の太さは35歳頃が、髪の密度は20歳頃がピークだと言われています。髪の毛が加齢で変化していくことを「加齢変化」と呼ぶのですが、これは誰にでも起こることなので、「加齢変化」が起こったからといって薄毛になるわけではありません。しかし、中には「加齢変化」の度合いが強い人がおり、そういった人が薄毛に悩まされることになるのです。髪の毛の本数自体は変わらなかったとしても、髪の毛の太さが2分の1になってしまうと、髪の毛の量や密度は4分の1になると言われています。特に女性特有の薄毛「びまん性脱毛症」の原因には、この「加齢変化」が深く関わっています。
女性ホルモンの減少
女性ホルモンは、女性だけでなく男性にもあるのですが、その中の「エストロゲン」には頭皮のコラーゲン量を増加させて、髪にハリとコシを与え、髪の幹細胞を刺激して成長を促進させる働きがあります。さらに、「プロゲステロン」という女性ホルモンには、髪の成長期を延ばすという働きがあり、この2つが減少してしまうことで薄毛へと繋がっていくのです。女性ホルモンは加齢とともに徐々に減少していくのですが、40代頃からは急激に減少を始めます。また、女性の場合であれば「出産」や「閉経」などによっても女性ホルモンは急激に減少すると言われています。
睡眠不足
日頃から睡眠時間が短かったり、睡眠不足が続いてしまうと、夜の髪の毛の成長を邪魔するだけではなく、ストレスなどの原因にもなってしまいます。ストレスが溜まってしまうと、自律神経失調になり、それが原因でヘアサイクルの乱れを引き起こしてしまう可能性があります。また、睡眠不足になると頭皮の血流が悪化するともいわれており、そういった面でも薄毛や抜け毛の原因となってしまうのです。AGA治療に関わる専門医によると、長時間仕事をする人や過緊張の状態が長い人、睡眠時間が短く5時間以下の人は臨床的に必ず抜け毛が増えると言われています。
血行不良
頭皮には毛細血管が多いので、元々「血行不良」になりやすく、血液が十分に運ばれてこないと毛母細胞が弱り、ヘアサイクルの乱れに繋がってしまいます。頭皮のすぐ下には毛細血管が張り巡らされているのですが、毛細血管は酸素や栄養を運ぶ赤血球がやっと通れるくらいの細さしかなく、動脈から血液が流れてきても、スムーズに流れていくわけではなく、動脈の血液の流れに押し出されるようにしてゆっくり流れていきます。その為、毛細血管を流れる血液は意外と少なく、その上あまり血液が流れない毛細血管は収縮していき、別の毛細血管を通って血液が流れていくようになります。そうなると、血液があまり流れない毛細血管はどんどんと細くなっていき、最終的には消えてなくなってしまう可能性があります。毛細血管が減ってしまうと、さらに血行が悪くなってしまい、毛母細胞に栄養素が届かなくなることでヘアサイクルが乱れてしまうのです。
喫煙
髪の毛が丈夫に育つためには、血液によって頭皮に運ばれてくる栄養素が必要不可欠になっています。もしも、血液が十分に運ばれなかったり、栄養素が足りなかったりすると、ヘアサイクルが乱れてしまったり、細く、抜けやすい髪の毛が生えてくる可能性が出てきます。そこで、「喫煙」と「血行不良」は繋がってくるのですが、タバコを吸う事によって毛細血管は収縮します。毛細血管が収縮するということは、頭皮に届くはずであった血液が届かなくなり、髪の毛の成長に必要不可欠な栄養素が足りなくなってしまうことになります。結果「タバコを吸う → 毛細血管が収縮 → 血行が悪くなる → 血液が流れにくくなる → 頭皮に栄養素が届かない → ヘアサイクルの乱れ」となってしまうのです。また、喫煙はヘアサイクルの乱れだけでなく、肩こり、頭痛、冷え性などの原因になるとも言われています。
ダイエット
髪の毛が伸びるヘアサイクルの「成長期」には、毛母細胞の分裂が活発になります。しかし、毛母細胞が分裂する際には、血液によって運ばれてくる「酸素」と「栄養素」が大量に必要となります。この時にダイエットで食事を制限してしまっていると、毛母細胞が分裂する際の「栄養素」が不足し、「成長期」なのにも関わらず髪の毛の成長が止まってしまう可能性があります。また、過度なダイエットをすることで「ストレス」が溜まり、それによってヘアサイクルが乱れてしまう可能性もあります。また、ファーストフードや外食など、過度な動物性脂肪やタンパク質に依存しない食事を心がけることが大切です。ヘアサイクルの「休止期」には、ダイエットによる極端な脂肪消費を避ける必要があります。バランスの良い食事とともにバランスの良い栄養摂取を行うことが重要です。
環境によるダメージの蓄積
環境によるダメージの蓄積によってもヘアサイクルは乱れてしまいます。環境によるダメージというのは、紫外線、乾燥、日焼けなどの環境要因の他に、シャンプー、トリートメント、育毛剤などのヘアケア製品などがあります。自分の頭皮や髪の毛にあっているものなら問題ないのですが、自分に合っていないのにもかかわらず使い続けてしまうと、逆に薄毛や抜け毛の原因となってしまう可能性があるのです。また、肌の紫外線対策をしている方は多いのですが、頭皮の紫外線対策をしている方は意外と少ない傾向にあります。頭皮も肌と同じ皮膚の一部ですので、薄毛、抜け毛、ヘアサイクルの乱れが気になる方は、他の肌と同じように頭皮も紫外線対策をするようにしましょう。
まとめ
今回髪がどうして生えるのか、髪の毛はどうして抜けるのかについてご紹介してきました。髪の毛が生えるメカニズムを理解することで、髪の毛を抜けないようにする方法、薄毛を改善する方法が見えてくると思います。ヘアサイクルを乱さないために重要なのは、やはり生活習慣です。十分な睡眠とバランスの取れた食事を意識して、健康的な生活を心がけてみてはいかがでしょうか。
